海洋ごみ

増え続ける海洋プラスチックごみ

 2010年には、192の沿岸国(世界人口の93%)に住む64億人が、25億トンの固形廃棄物を発生させたと推定されています。このうちの約11%(2億7500万トン)はプラスチックであり、480万から1270万トンが海洋に流入したと計算されています(1)。これは東京ドーム4個~10個分に相当します。

 上位20か国の不適切に管理されたプラスチック廃棄物は2010年に全体の83%を占めています。特に、1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナム、5位スリランカとなっていて、アジア諸国に多いことが分かります(1)。

 日本でも、環境省による海洋ごみ調査が行われています。種類別で見てみると、重量ベースでは自然物ですが、容積及び個数ベースではプラスチック類が最も高い割合を占めています(2)。


なぜ海洋プラスチックごみは問題なのか?

 海洋プラスチックごみは、景観を損ね、観光・漁業へ影響を与えるだけではなく、海洋生態系にも大きな影響を与えます。


1.海洋生物の誤飲

 ゴミを他の生き物と誤って食べてしまうケースがあります。実際に、クジラやウミガメなどのおなかの中から大量のプラスチックが発見されています。


2.ゴーストフィッシング

 自然現象または人為的ミスにより、予期せずに漁具が人為的な制御を離れ、自然環境に放出してしまうことで発生します。釣り具や漁網が生き物に絡まり、命を落とすケースもあります。ゴーストフィッシングされてしまった生物自体が「撒き餌」となり、副次的に被害を広げることも懸念されています。

3.マイクロプラスチック問題

 直径5ミリメートル以下の小さなプラスチックのことをマイクロプラスチックといいます。発生源の違いにより「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」に分けられます。

①一次マイクロプラスチック

・洗顔料、化粧品や工業用研磨材などに使用されている小さなビーズ状のプラスチック原料

・プラスチック製品を作る原料として使われる小さな粒である「レジンペレット」

・洗濯の際に小さな繊維として流れ出るポリエステル等の合成繊維

②二次マイクロプラスチック

 環境中に流れ出たプラスチックが紫外線や外的な力等の外的要因により、徐々に劣化・崩壊していき、小さく細片状(5mm以下)になったもの


 マイクロプラスチックは、動物プランクトンや小型魚類が採餌行動の際に一緒に吸いこんでしまい、消化管をふさいだり、窒息させてしまうということがあります。こうした物理的な影響だけでなく、もっとも問題とされているのが、プラスチックに含まれる添加物による影響です。プラスチックの製造過程では、さまざまな有機物が添加されますが、人体を含め生物に有害なものが含まれています。


プラスチックに含まれる有害物質による影響

 有害物質の中で特に問題とされているのがPOPs(難分解性有機汚染物質)です。ダイオキシン類など22の物質がストックホルム条約で登録されていて、その製造・使用・輸出入が厳しく規制されています。その中でも特にPCB(ポリ塩化ビフィニル)が注目されています。

 PCBsは一種の油で、製造が始まった1930年ごろは、安定性、耐水性、不燃性など理想的な物質とされ、大量に使われてきました。その後、人体や生物の影響が問題となり、生産が中止されましたが、すでに合成されたPCBsはなくなるわけではありません。世界で製造されたPCBsの3割が陸上や海洋に散らばったとされています(3)。実際、世界中の海岸に漂着したプラスチックごみからPCBsが検出されています(4)。

 POPsの多くは疎水性なため、海洋生物に取り込まれると消化液になじまずに、脂肪組織に蓄積されていくことになります。そして、小型生物に蓄積された有害物質は排出されることなく、食物連鎖と通じて大型生物に取り込まれていきます。これが生物濃縮です。こうして最終的には、有害物質が人体に取り込まれていくことになると考えられています。


私たちにできることは何か?

1、なるべくゴミを出さないようにする。

・レジ袋削減のため、マイバックを使用する。

・ペットボトルではなく、紙パック製品を購入する。

2、過剰な包装は断り、簡易包装を心がける

3、ゴミはゴミ箱へ!ポイ捨てはしない。

4、自分でゴミ拾い、ビーチクリーン活動に参加する。


ダイバーによる海中クリーンアッププロジェクト開始しました!

 普段海に潜るダイバーができることはないかと考え、ダイバーによるクリーンアッププロジェクトを開始しました。海に入ってしまったゴミはダイバーしか拾えません。海洋生物に影響が出る前に、マイクロプラスチックになってしまう前に、まずは今あるゴミを拾います。

 詳細は、CAMPFIRE(クラウドファンディング)のページをご覧ください。今回は、小規模のパイロットとして開始しますが、少しずつ日本全国に広げていきたいと考えています。賛同いただける方は、ぜひご協力をお願いいたします!

【参考資料】

1, Jenna R. Jambeck et al. Plastic waste inputs from land into the ocean. Science 13 Feb 2015 Vol. 347, Issue 6223, pp. 768-771

2. 環境省, 平成28年度全国10地点(稚内、根室、函館、遊佐、串本、国東、対馬、五島、種子島、奄美)における漂着ごみのモニタリング調査

3.田辺 信介, 海洋におけるPCBの分布と挙動, 日本海洋学会誌, 1985 年 41 巻 5 号 p. 358-370

4. 高田秀重, International Pellet Watch (IPW):海岸漂着プラスチックを用いた地球規模でのPOPsモニタリング. 地球環境, 19, 135-145, 2014.